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Scotch & Soda [手品]

マジシャンは財布から500円玉と10円玉を1枚ずつ取り出した。
「今日やるのは、マジックというよりもゲームに近いです。
賭け事とかお好きですか?」

「結構好きですね。」 観客は答えた。

観客に片方の手をひろげてもらい、取り出した500円と10円を握ってもらう。
その際、マジシャンは500円玉も10円玉も抜き取ったりしていないことを確認する。

「では、コインを握っている方の手を背後にまわしてください。」
観客はマジシャンの指示に従う。

マジシャンは身振り手振りを交えながら続ける。
「次に空の、もう一方の手も背中にまわして下さい。」

観客は両方の手を背後にまわしている状態になった。

「ではどちらでも結構ですから、空の手の方に1枚コインを移動させてください。」

「出来ました。」 観客は答える。
今、観客の両手にはそれぞれ一枚ずつコインが握られている。

「質問があるんですが、500円と10円のどちらが好きですか?」
「えっ…。そりゃぁ、500円の方が好みですよ(笑)。」
観客はマジシャンの問いに対して少しハニカミながら答えた。

観客の微笑に同調するようにマジシャンも笑みをこぼしながら続ける。
「なるほど。たいていのお客様はそう仰いますからね(笑)。
では500円玉を握っている方の手を前に出してください。」

500円玉と10円玉とは大きさが違うので、
観客は手のひらの感覚で容易に500円玉を握っているのがどちらかわかる。
観客はすっと左手を前に出した。

「こちらが500円玉の方ですね。ではあけてください。」

観客は前に出した左手をゆっくりとあける。
そこには当然500円玉がある。

マジシャンは手のひらの500円玉を取り上げながら続ける。
「では、選ばれなかった10円玉を握っている方の手を握ったまま前に出してください。」
観客はその指示に従い、背後にまわしていた右手を前に出した。

マジシャンは出された右手を指さしながら言う。
「最初にこれからやるのは賭け事だと言ったのを覚えてますか?
どういう賭け事かというと、今握られている10円玉は僕がお呪いをかけると
跡形もなく消えてしまいます。もし本当に消すことができたら私の勝ち。
もしできなかったらあなたの勝ち。そういったゲームです。」

観客には確かに10円玉を握っている感触がある。
とてもこの状態から10円玉を消失されることなどできそうにない。
「面白いですね。やりましょう。」

マジシャンは微笑み、取り上げた500円玉を観客に見せながら続ける。
「じゃあ、私はこの500円玉を賭けましょう。私が負けたら500円を差し上げます。
私が勝ったら…うーん、そうですね…。じゃあ、スコッチのソーダ割りを一杯おごってください。」

「OK。いいですよ。」

観客の返答を聞き、マジシャンは一方の手をすっと観客の手の上に移動させ、
一回だけ指をパチンと鳴らした。

「今、一瞬ふっと軽くなったのわかりましたか?
多分ですけど、中の10円は跡形もなく消えているはずです。
ゆっくりあけてみてください。」

手のひらにはまだ確かに10円玉を握っている感触がある。
「そんなわけない」と思いながら、観客は恐る恐る手をあけてみた。

ひらかれた手の中には10円玉ではなく100円玉があった。

「ね?間違いなく10円玉は跡形もなく消えてしまったでしょう?」
マジシャンは、観客の驚いた表情を見つめながら言った。



これは「Scotch & Soda」といわれるマジック。
個人的にこういったウィットに富んだエンディングが大好き。

これを見せられた人は思うでしょうね。
「ぜってぇー、もう2度とマジシャンと賭け事なんてしねぇっ!!」

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