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マジシャン「前田知洋」 [手品]

どんな分野にも、自分の好みに合致して、
自らを魅了して止まない人物というのはいるものではなかろうか。

狭い視野で恐縮だが、文学で言えば「芥川龍之介」。
作曲家での「松本孝弘」。
作詞家での「稲葉浩志」。
人としての「松本孝弘」と「稲葉浩志」。

そしてマジシャン、人としての「前田知洋」。

前田さんは日本初のプロ・クロースアップマジシャンであり、
日本を代表するプロマジシャンである。

奇跡の指先 前田知洋 スーパー クロース アップ マジックII

奇跡の指先 前田知洋 スーパー クロース アップ マジックII

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2006/04/26
  • メディア: DVD

そもそも、「クロースアップ・マジック」とは、一般にテーブルを挟み、カード・コインなどを使い、
少人数を相手にして行うマジックの形態のことを指す。
この分野の日本におけるパイオニア的存在が、前田さんである。
現在はテレビ番組への出演など、メディアへの露出が増え、一般的な知名度も非常に高い。

私がマジックを始めて一年経つか経たないかの時に、
前田さんの演じるマジックをテレビで観た。 その頃は、マジックの練習が楽しかった。
朝方にマジックの用意を制服に忍ばせ、学校へゆく。
仲間内でちょっとした小品ともいえるマジックを見せると、予想以上の反響が返ってきて、
友人たちよりも正直演じた自分の方が結構驚いた。
その日一日はそのマジックの話で持ちきりになるほどで、何度「タネ教えて」と言われたことか。
そして、それが源となりマジックの持つ面白さに魅了されていったことは想像に難くない。

思い返せば中学生時分、私はほのかな幻想を抱いていた。
それは「日本にいるどのマジシャンよりも上手く演じれる」という、何の根拠も無い妙な自信。
それは傲慢で、独りよがりの高ぶりと解釈されても大差ないものだった。
学校へ行けば、こんなにも簡略に喝采を得られるのなら、エンターテイメントの世界って
案外容易いものなのかと、そんな未熟な幻想を。

そんな渦中に、前田さんの演技を拝見した。
人間ってここまで綺麗に奇跡が起こせるのか...と思わず画面に食い入るように
前田さんの一挙一動を凝視した。
マジックに関して半端な知識をもっていたからこそ、前田さんの演技レベルの高さがわかった。
この時、失礼ながら「前田知洋」というお名前を存じ上げてはいなかったのだが、
後に前田さんが世界的に有名な、日本を代表するマジシャンであることを知るのである。

前田さんの演技時間は十分ほどであったが、その後、何度もビデオで繰り返し観た。
何度観ても惚れ惚れするような、まさにこれがマジックという分野をとことん追求していった末に
到達する理想形なのだなぁとつくづく思い、また再生のボタンを押す。

マジック以外、例えば芸能界でも、演劇の世界でも、
キャラクターというものが主要な意味を持つ。
嫌いな人間にどれだけ不思議な現象を見せられても、素直に感動できないように、
嫌いな役者が出演しているからといって観ない映画が在るように、
我々受け手は、映画、音楽、絵画、そしてマジックという様々な媒介を通し、
実質的にはそれを行う演技者(作者)の人柄を見ている。
自らの感性と照らし合わせ、「この方の曲、マジック、絵画なら鑑賞してもいい」と、
人は心のどこかで判断している。

前田さんはマジックという枠を取り外し、一人の「人間」として見てもとても魅力的な方だ。
容姿端麗、頭脳明晰、気品高く、英語もとってもお上手。
最近、テレビ番組内で、英語で演技なさっているのを拝見したが、
ここまで綺麗に発音できる日本人がいるとは…と思うくらい綺麗な発音であった。
使われている単語もちゃんと選ばれていて、その国の歴史的背景も考慮に入れた上で
マジックのプロットを組み立てられていた。
まさにこれが「プロ」というものなのだと、
そう思わずにはいられない程の演技がそこには在った。

前田さんがお書きになっているブログ「F.A.Q」を拝見すると、前田さんが
様々な分野に造詣が深いことがわかる。
多様な分野に関心をもたれる、その好奇心・探究心は羨ましい限りであるが、
それ以上に、それから得た知識をちゃんと自分の知識体系とされている所がすごい。
きっとかなりの読書家なのだろうと推察する。
マジックの演技中に感じられる知的さであったり、どことなく漂う気品などはまさに
こういった常日頃からの積み重ねによって齎されるものだろう。
それは決して一朝一夕に為される事柄ではない。

前田さんは、マジックのテクニックという観点から言っても、
世界で上から何番目と言う方なのだが、その演技を見ると、
テクニックなんて度外視に、その悠然と美しい演技スタイルにただただ心奪われてしまう。
演劇の基礎、ヴォイストレーニング、心理学などの勉強もなさっており、
その全ての要素が前田さんのマジックを成立させているのだろう。

テレビへの出演の際、よく「奇跡の指先」と形容されているが、
もっと言えば視線の移動、顔の表情、口上、間の取り方等によるミスディレクションなど、
体が起こす一挙一動に無駄な動きなど一つも無く、その全てが何らかの意味を持っている。




前田さんの演じるマジックをコピーすることはそれほど難しくはない。
しかし、前田さんのように悠々と演じることは誰もできない。

僕が世界中で最も尊敬するマジシャンの一人、「前田知洋


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